淡い月の光がそこにありました。

十九歳で大学に入学しました。

 

実家との往復のための交通手段は鉄道でした。

 

道のりは長く感じました。

 

道のりは長く、慣れないうちは何回も乗り継いで本線に乗り換えました。

 

山越の路線のスイッチバックの場所はもどかしい感じもありましたが、川の水の色、畑の広がり、どれも新鮮でした。

 

豊かな自然の中を平凡な感じのするディーゼルの列車は単調な音のリズムで走るのでした。

 

大概経由地の大きな市の中心街の駅で降りて、大きな書店に入り、長い時間立ち読みをしました。

 

新しい詩集に出会う時、とても得をした気分になったものです。

 

再び電車に乗り込みます。

 

いつも日が暮れていました。

 

小さな駅で停車し、再び列車が動き始めます。

 

ふと左側の窓に顔を近づけると、丸い月が見えました。

 

私は本を閉じて風景をじっと見ていました。

 

月の下に、わずかにその光を反射する水平線が見えました。

 

海は波が見えないほど静かで、濃紺に薄い乳液を混ぜたような色彩でした。

 

その所々に、月の色がかすかな黄みを届けていました。

 

停車している間も海を見続けました。

 

時間も忘れていました。

 

初めて感じる色彩がそこにありました。

 

切ないわけではなかったのです。

 

ただ美しかったのです。

 

何も考えず味わい続けました。

 

レールの音に気付いた時、沿線の切り通しが海の景色をさえぎりました。

 

次第に海が遠ざかって行きました。